牛久シャトーで泳いだら
9月 25th, 2009 by info
牛久に名所ありと言えば、まず第一に指を折るのが牛久シャトー(シャトーカミヤ)である.点において、異論を唱える人は少ないと思います。風格のあるレンガ造りの歴史的建造物及び手入れの行き届いた広い庭園は、水戸の偕楽園と並び称せられるべき茨城の名所であると言っても過言ではないでしょう。
レンガ造りの大きな建物(内、三棟は国の重要文化財に指定されている)が百数十年の時を経て、所々修理を必要とする箇所もあるようですが、埃を被ったレンガの表面の僅かな凹凸を指でなぞれば、過ぎ去った時間の長さを思わずにはいられないのであります。門を入った突き当りには、神谷伝兵衛記念館」があって、ワイン造りに関する様々な資料が展示されていて、その中にいると嘗てそこで働いていた古の人々の息遣いが聞こえて来そうな気持ちにすらなります。
歴史的にも重要な場所と建物でありながら、入園料を徴収しないのをいいことに、敷地内の庭園を専らもんちゃんの散歩コースとして利用させてもらっています。「はなみずき」からの距離はおよそ一キロです。しばらく前は早朝から門を開けていたので、自由に朝の散歩を楽しむことが出来たのですが、最近は管理上の問題からか、午前9時ごろまでは門を閉ざしたままになっているので仕方なしにその敷地の周囲を経巡って帰ってきます。
土曜日の夕方は当院の外来も午後4時ともなれば、その日最後の患者の診察を概ね終えているので、朝入れなかった敷地内にもんちゃんを連れてゆきます。 人込みの嫌いなもんちゃんは、当初可なりビビって、尻尾を股の間に挟んで尻込みする有様でしたが、最近は堂々その門から中に入って行くことが出来るようになりました。門を過ぎると、眼前に聳える時計塔のある最も大きな建物の中央は、アーチ型をした高さ5メートル余りの通路になっていて、真っ直ぐ進めば、記念館との間に噴水のあるタイルで円形に縁取られた浅い池が見えて来ます。そこは、綺麗な水を湛え、子供たちの恰好の水浴び場となっていました。そんな光景を何度となくもんちゃんと遠くから眺めていた私の心にひとつの思いが去来するのでありました。彼らに許されることがもんちゃんに許されざるべきか。
その日、私たち二人は堅い決心を胸に いつものように正面の門をくぐり、心なしゆっくりと噴水に近づいて行きました。幸い噴水の池には水浴びしている人影もありません。逸る心は徐々に抑制しがたく、リードを強く引っ張る感触を合図に二人は一目散に駆け出しました。そして、もう一歩踏み出せば池の中という所で、手綱を握る手を一気に緩めると、刹那、宙に舞ったもんちゃんの肉体は勢いよくダイブし、大きな水音と共に、水飛沫を上げていました。それはもんちゃんと私の思いが叶った瞬間でした。
池の縁に色とりどりの花の植わったプランターが隙間なく並べられるようになったのは其れから間もなくのことでした。 Mann Tomomatsu
文章がうまいですね。時を忘れて引き込まれてしまいました。
店長に同じく、素晴らしい文章に引き込まれてしまいました。