もんちゃんももう三歳
7月 25th, 2011 by hpone_support2A1
七月二十五日、三回目の誕生日を迎えるもんちゃんは「花粉症の疑い」を除けば、これと言った病気にも罹らず、ケガをするような事も無く息災に暮らして参りました。近況、夏バテの徴候もなく、旺盛な食欲は減退する気配もありません。彼が元気であるばかりでなく、見た人の多くは彼の眼差しはヒトのそれのようだと言い、彼の発する優しく穏やかなオーラが周囲の人間に対しても健康や幸福を与えていると思えてなりません。パスカルは病弱を讃えたといいますが,健康であるということは無条件に喜ぶ可き事であります。
知人の飼っている十歳になる愛犬(マルチーズ)は二歳の時、癌を発病し術後抗癌化学療法を受け一命を取り止めました。ところがつい最近、肉眼的血尿から尿管結石、膀胱腫瘍が見つかり、再び手術を受けることとなりました。石の処置は兎も角も、多発性であるそれらの腫瘍が悪性であれば、命に関わることを覚悟しなければならず、友人は意気消沈、憔悴し切っていました。4日間の入院で帰宅出来たものの、病理組織の結果が判明するまでの時間は長く、更に戦々兢々として一週間余りの日々を送らねばなりませんでした。お蔭で見ているこちらもやきもきするような思いをしたのですが、結果は幸いにして良性。一時尿管結石の症状が出たようでしたが、今ではすっかり元気になって家の中を跳び回っているという話です。ヒトの不運を引き合いに出しても何ですが、多くのヒトを癒しているもんちゃんがひたすら健康で、終生手術などを受けることがありませんようにと祈るばかりです。
最早愛犬とは肉親と同列若しくはそれ以上で、病気の時は言うに及ばず普段の生活でも彼を中心に家族が動いていると言って過言ではない、とその友人は言っていました。だから、旅行の計画を立てる時でも、愛犬の同行が叶わない場合には、ホテルに預けるのも心配なので、必ず家人の誰かが一緒に残るといった具合だそうです。
考えてみればもんちゃんの場合もそれに近いものがあって、月に何度か皆で食事に出かける数時間を除いて長時間ひとりにすることは滅多にありません。海の日の前後、院長の学会出張で「はなみずき」を延べ三日間空けるに当たり、その間は私が留守を預かりもんちゃんの世話をすることになりました。家の中での彼はしばしば私の側に寄り添ってくるので、起居を共にするという又とない時間を過ごしました。ただ、三十分程の買い物に出掛ける時にはひとりで留守番をさせることになりますが、実に悲しそうな顔をするので、後ろ髪を引かれる思いで彼を置いて出ざるを得ず、用事もそこそこに出来るだけ早めに帰って来なければなりません。他の犬でもそう見えることがあるかも知れませんが、もんちゃんは、実に、酷い寂しがり屋なのです。そのためか、嘗て出場した甲斐犬の展覧会では昔のブログで御報告した如く、大方の予想に反して二十四頭中七位という成績だった訳です。彼の名誉の為にももう一度出場の機会があれば、と思うことがありますが、散歩の途中顔を見ただけでは雌と間違われることもあったりして、雄の甲斐犬に求められる可き資質は、残念ながら彼には少し足りないかも知れません。そんな箱入り息子に育っているとすれば、その責任の多くは私にあるでしょう。
そもそも甲斐犬とは、他の犬を噛み殺すとか、飼い主以外には懐かないとかいう獰猛且つ孤高であるというような属性を以って特徴付けられる可き犬種であると世間では認知されています。そこで、以前この点に関して、彼が余りにフレンドリーであるのはまだ幼いからで、何れ「本物の甲斐犬」に変貌するのではないか、ともんちゃんのブリーダーの「先生」に尋ねた事がありました。その答えは否で、「恐らく変わることはない」、というのが彼女の答えでしたし、今はまだその予言の通りです。
もんちゃんに対する期待値は特別高いものではなく、彼の健康と安全の継続であり、そして、これを末長く見守っていられることが最も強い私の希望です。しかし、一種の欺瞞かも知れないが、時に危険を顧みない彼の勇猛果敢さを想像する事があって、斯くの如きアンビバレントな思いがふと自分の心の中で葛藤することがあるのもまた事実です。 (Mann Tomomatsu)